Spiceさんとの約束。

・今は、休業されているが、私の好きな洋食屋さんがあった。

spiceという、洋食屋さんで、

その名のとおり、色々なスパイスが絶妙に使われ、

さらに季節ごとに、新鮮な旬の魚や肉が使われるところも魅力だった。

丁寧に作り込まれ、また、化学調味料も一切使っていない。

お店も雰囲気は柔らかく、あたたかい。

シェフも、ウェイトレスさんも、とてもあたたかい。

そういうお店だった。

私の下手な文章では、うまく表現できない。

あるいは、まだ言葉にするのには、寂しさとか、

いろんな気持ちが整理できていないのかもしれない。

・私は、ここのランチを週末に食べるのが楽しみだった。

あるいは、大切な人との、夜のディナーも素敵だった。

毎年、クリスマスはクリスマスのディナーをテイクアウトして、

家族で食べた。

あたたかいスープ、あたたかいチキン。

とても、あたたかった。

私は、今でも思い出す、

 甘エビのカレー、冷やしナポリタン、牡蠣のパスタ、新鮮なカルパッチョ、

いつも頼んでいたアイスコーヒーの味。

食べている人を、嬉しそうに見ている、シェフとウェイトレスさん。

チョークで書かれた、手書きのスパイスの解説。

食事が終わった後のウェイトレスさんとの楽しい雑談。

・時は経って、私は仕事や家族の両方で、

以前のように通えなくなってしまった。

いや、そんな単純な事で、ないかもしれない。

自分の事で、色々とご迷惑をかけた、という、

後ろめたい気持ちも、少しあったかもしれない。

じぶんに正直になれば。

でも、常に気にかけていた。

そして、食べにいきたいと思っていた。

そして、休業のご挨拶を丁寧に頂いた。

・休業前の最後のランチ。

相変わらず、あたたかく迎えて頂いた、それが嬉しかった。

私は、なんだか、うまく言葉にできないし、

きっと、言葉にもできない気持ちなんだろうなぁ、と思った。

今は、習っていないけど、

昔、私はサックスを習っていた。

だから、もしうまく演奏するようになれたら、

スパイスでリサイタルをさせてくださいと冗談交じりに言っていた。

あるいは、結婚することがあったら、結婚式の二次会は、

スパイスでさせてくださいとも、言っていた。

シェフは、「こんな小さいところで」

と笑っていたけれども。

けれど、この2つはまだ、果たされていない。

・サックスはもうやっていないし(挫折した。)

結婚もしていないけれども、ウエイトレスさんの言葉を借りれば、

またどこかで繋がることがあると

私は、思っている。

(人生って、そういうもんさ、とも思っている。)

そして、お店の再開を本当に心から楽しみにしている。

果たされなかった約束もいつか叶うのではないかと。

​あたたかい卵
​むかしの卵

© 2017 おはなしの卵社 イラストレーション:kazu