© 2017 おはなしの卵社 イラストレーション:kazu 

It’s wonderful World?

 

5月5日

 

22歳のちょうどこの時期、ゴールデンウィーク。

田んぼのカエルが夜になるといっせいに鳴き出す頃、

ぼくと親友は帰省していて松本で会った。

 

高校時代からの親友。お互いに楽しい時も悲しい時も一緒であった親友。

無邪気でいたずらっぽく笑う、そんな笑顔がぼくは大好きだった。

彼のリクエストで松本のおいしいカレー屋さん、ラーメン屋さんをハシゴした。

若いからいくらでも、まだ食べれた。

とてもおいしかった。

彼も満足していた。

 

安い居酒屋でビールを飲んだ。

話題は社会に出ること、就職だったり、お互いにつきあっている、つきあっていた、

彼女のはなしだったり。

ぼくもいろいろ悩んでいたし、彼も悩んでいる様子だった。

ひとしきりぼくらの未来の話した後、

彼はおもむろに、

「お前に出会えて嬉しかったんだよ。」

と話し始めた。

ぼくはそんなこと今までいわれたことがなかったし、

彼はそんなことをふだん口にするタイプでなかったので驚いた。

でも、嬉しかった。

自分がだれかに必要にされたりしている事は今まで考えたことがなかった。

このいろいろな汚い世界の中で友情というものは本当に、

輝く大切なものなのだなぁと思った。

その輝きは彼を失ってからもますます輝きを増している。

 

母の日が近いゴールデンウィーク明けに、

彼がこの世から去った知らせが入った。

ぼくはなにかの間違いではないか、そうであってほしいと思った。

松本に帰った。弔辞はぼくが読んだ。心の整理がつかなくて内容は今でも思い出せない。

葬儀ではアンパンがふるまわれた。

アンパンなんてあいつらしいなぁ、と誰かが言った。

本当にそうだと思った。

アンパンをほうばった。生きている、と思った。

それ以来、アンパンがすごく特別な食べ物になった。

 

それから母の日は命日が近いので実家にお邪魔している。

ご迷惑でなければいいんですが、、と恐縮しながらカーネション片手に彼の母親と

近況を語り合う。祈る、語る、思い出す、それは本当に良い時間である。

ほんとは毎日祈りたいんだけど、時間は時に残酷で、年齢とともに

生きているものは生きているものでやらなければならないことが増える。

時々、本当に正直、うん、正直、生きることが面倒になってしまうことがある。

冗談じゃなく、誰にも迷惑をかけず消滅したいと思うことだってある。

基本的には生きるってそんな楽しいことではないのかもしれない。

 

でもその中で輝くものをみつけたとき、それは嬉しいなぁって思う。

ぼくにとって彼にお線香を立てて、思い出話をすることは、

輝きを見つける時間だ。

そのたび、そのたび、彼との思い出は輝いている

ぼくにとってその光は灯台のような光だ。

その光をみるたび、ぼくは暗い海の中でも新しい発見がある。

そう思うと世界は素晴らしいのかなぁ。。

いまだにそれはよくわからない。

 

そうだな、今日は彼の好きな清志郎を聴こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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